日本で病院に行く流れ
マイナ保険証への完全移行、紹介状なしの特別料金、長期収載品の自己負担、リフィル処方箋。受診とお金の仕組みを最新の制度で整理します。
受診の入口は今も「まずクリニック、必要なら紹介状で病院へ」ですが、その周辺の制度はここ数年で大きく動きました。保険証はマイナ保険証が基本になり、紹介状なしで大病院に行く特別料金は引き上げられ、薬局では先発医薬品を希望すると追加負担が生じます。古い知識のままだと、同じ受診でも払う額が変わります。
紹介状なしの大病院は¥7,700以上の特別料金
クリニック(20床未満)は発熱、慢性疾患の処方、皮膚、眼、歯など日常診療の窓口で、CT・手術・入院・専門診療は紹介状を持って病院へ行く分業です。この分業には金銭的な強制力があります。紹介状なしで特定機能病院や一般病床200床以上の地域医療支援病院などを初診で受診すると、選定療養費として医科で¥7,700以上(2022年10月改定の全国下限。病院により¥11,000程度の例もある)が診療費とは別にかかります。
数時間の待ち時間も含めると、急を要しない症状で大病院に直行する理由はほぼありません。逆に、クリニックで「念のため大きい病院で」と言われたら、紹介状(診療情報提供書)を書いてもらえばこの特別料金は発生しません。
出典:厚生労働省:紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の「特別の料金」
受付で出すもの:保険証はマイナが基本
従来の健康保険証は2024年12月2日で新規発行が終わり、手元の券面も2025年12月1日までで有効期限が切れました。窓口で使えるのはマイナ保険証か、マイナンバーカードを持たない人に交付される資格確認書(申請不要、有効期限は最長5年)の2つです。期限切れの旧保険証を暫定的に受け付ける経過措置は2026年7月末までとされており、今は移行の最終段階です。
マイナ保険証は受付のカードリーダーで顔認証か暗証番号を通し、薬剤情報・特定健診情報の提供に同意するか選びます。同意しておくと、初めてのクリニックでも医師が過去の処方を参照でき、問診の説明がかなり省けます。転職や引っ越しで保険者が変わっても券面の差し替えが不要になったのは、実務上いちばん大きい変化です。
窓口で払う額の内訳
自己負担は原則3割です。会計の中身は点数(1点=¥10)で決まっていて、初診料は291点(¥2,910、3割で約¥870)、再診料は75点(約¥230)。ここに検査・処置・処方箋料が積み上がります。かぜの初診で簡単な検査込みなら窓口¥1,500〜3,000、薬局と合わせて¥2,000〜5,000が普通の着地点です。
小規模なクリニックは今もカード・QR決済に対応していないことがあり、現金¥5,000程度は持っておくと会計で止まりません。マイナ保険証や資格確認書を忘れた場合はいったん10割払いになりますが、同月内に同じ窓口へ持参すれば差額はその場で戻るのが一般的です。月をまたぐと保険者への療養費支給申請になり、手間が一段増えます。
処方箋と薬局:先発品希望は追加負担の時代
院外処方箋の有効期限は発行日を含めて4日です。週末を挟むと簡単に切れ、切れたら再診して取り直すしかないので、受診の帰りに薬局へ寄るのが原則です。
2024年10月からは長期収載品の選定療養が始まりました。後発医薬品(ジェネリック)が存在する先発品を、医療上の必要性がないのに患者希望で選ぶと、薬価差額の4分の1(消費税込み)が保険外の自己負担として上乗せされます。「先発じゃないと効かない気がする」だけの希望は、毎月の薬代に直接響くようになりました。医師が医療上必要と判断して処方箋に明記した場合は対象外です。
症状が安定している慢性疾患なら、リフィル処方箋(2022年4月導入、同じ処方箋で最大3回まで調剤可)を医師に相談すると、再診料と通院の時間を丸ごと節約できます。
出典:広報誌「厚生労働」2024年10月号:長期収載品の選定療養
高額療養費と医療費控除:戻ってくるお金
月の自己負担が上限を超えた分は高額療養費制度で戻ります。一般的な所得区分(年収約370万〜770万)の上限は「¥80,100+(総医療費−¥267,000)×1%」。以前は事前に限度額適用認定証を取る必要がありましたが、マイナ保険証で情報提供に同意していれば窓口の請求が自動的に上限で止まるため、入院や手術の予定があっても事前手続きは原則不要になりました。
年間の医療費が世帯で10万円(または所得の5%)を超えた分は、確定申告の医療費控除で所得から差し引けます。通院の交通費も対象に含められるため、領収書と明細は月ごとに封筒1つで保管しておくのが最低限の管理です。
夜間・休日に具合が悪くなったら
迷ったときの相談先は#7119(救急安心センター)です。看護師らが「今すぐ救急車か、夜間診療か、明日の受診でよいか」を切り分けてくれます。未導入の地域もあるため、自分の自治体が対象かは一度確認しておく価値があります。子どもは全国共通の#8000(小児救急電話相談)です。
夜間・休日でも命に関わらない症状なら、自治体の休日急患診療所や輪番制の当番医が第一候補です。大病院の救急外来に自己判断で行くと、前述の選定療養費と長い待ち時間の両方を引き受けることになります。明らかな重症——呂律が回らない、胸の強い痛み、意識がおかしい——は迷わず119です。
用語
- 選定療養費: 紹介状なしの大病院初診などにかかる保険外の特別料金
- 資格確認書: マイナ保険証を持たない人に交付される受診用の証明書
- 長期収載品: 後発医薬品が出た後も販売される先発医薬品
- リフィル処方箋: 同じ処方箋で最大3回まで調剤できる仕組み
- 高額療養費制度: 月の自己負担に上限を設ける制度