退職:辞表1か月前、社会保険、住民税、失業手当
退職届の提出時期、健康保険の任意継続と国保の選択、住民税の一括徴収、ハローワークの失業給付、外国人特有の入管届出を実用基準で整理します。
日本の退職の難所は告知ではなく、退職後の手続きの連鎖にあります。社会保険の切替、住民税の一括徴収、失業手当申請、外国人なら14日以内の入管届出が加わります。各項目に窓口と期限があり、忘れると次の仕事や在留更新に影響します。この記事では退職前、退職当日、退職後の3段階で整理します。
1. 退職前:辞表1か月前と引継ぎ
民法第627条は無期雇用なら2週間前の通告で辞職可能と定めています。しかし日本の多くの会社の就業規則は1か月前の通告を求めるため(労使合意で民法より厳しい)、円満退社を望むなら1か月前で進めます。
辞表の提出には注意点がいくつかあります。退職届と退職願は別物で、退職届は確定した意思表示で撤回不可、退職願は申請で会社が受理する前なら撤回可能です。通常は退職届を使います。直属上司に対面で口頭通告してから書面提出するのが日本の慣例で、メールのみはNGです(後の紛争で不利になります)。退職日は月末を選ぶのが社会保険と住民税の処理が最もすっきりします。
引継ぎの標準的な動作は、業務マニュアル作成、後任への口頭引継ぎ(2-4週間)、顧客への退任挨拶メール、社内システムのアクセス権削除、社用PC・スマホ・名刺・社員証の返却です。
有給休暇消化は退職前に未消化分を全て使えます(労基法第39条)。会社は原則として拒否できません。
出典:厚生労働省:労働基準法第39条 年次有給休暇、e-Gov法令検索:民法第627条。
2. 退職当日:受け取るべき5つの書類
退職当日に会社から受け取る書類は5つです。
| 書類 | 用途 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者離職票(略称「離職票」) | 失業手当申請に必須、ハローワークに提出 |
| 雇用保険被保険者証 | 次の会社で雇用保険を継承 |
| 健康保険被保険者資格喪失証明書 | 国保か任意継続加入時に必要 |
| 源泉徴収票(当年分) | 確定申告と次の会社の年末調整 |
| 年金手帳・基礎年金番号通知書 | 次の会社に提出、または国民年金加入時に使用 |
離職票は退職後10-14日の郵送が一般的で、当日受け取れないのが普通です。1か月以上届かない場合は前社の人事かハローワークに連絡します。
会社に返却するものは、社員証、名刺、社用PCとスマホ、制服、社章、社員バッジ、社内資料、会社の鍵です。紙の健康保険証は2025年12月で失効済みのため返却不要(マイナ保険証に移行)、会社側が資格喪失届を提出します。
出典:厚生労働省:離職票が届かない時、全国健康保険協会:資格喪失証明書。
3. 退職後:社会保険と住民税の切替
退社翌日から会社の社会保険は自動的に失効します。次の選択肢は3つです。
| 選択肢 | 内容 | 期限 | 保険料 |
|---|---|---|---|
| 次の会社の社会保険 | 入社時に自動加入 | 入社後即時 | 給与の約15%(労使折半) |
| 任意継続被保険者(任継) | 前社の健保を2年継続 | 退職後20日以内に申請 | 月額固定(労使折半なし、全額自己負担、上限あり) |
| 国民健康保険(国保) | 自治体加入 | 退職後14日以内 | 前年所得別、月¥15,000-40,000 |
任継と国保の選択は、前年所得が高い人は任継のほうが安く、所得が低いか扶養家族が多い人は国保のほうが安いです。最も簡単な方法は市役所窓口で両方の見積もりを取って比較することです。
年金の切替は、会社の厚生年金が止まり、国民年金(第1号被保険者)に切り替える必要があります。国保と一緒に市区役所で手続きします。2026 年度(令和 8 年度)の月額は ¥17,920 です。次の会社に入社する際に厚生年金に戻ります。
期限は厳格で、国保は14日以内、任継は20日以内です。期限超過は遡及加入扱いになり、退職日からの保険料が一括追徴され、その間は無保険状態になります。
住民税は前年所得に基づき、退職時の処理は2パターンです。6-12月退職なら残月分は自分で納付(普通徴収、自治体から納付書送付)、1-5月退職なら残月分を最終給与から一括天引きされます(法定)。年収¥5,000,000なら最終給与で¥20,000-100,000の追加天引きがあり、手取りがマイナスになることもあります。次の会社が決まっているなら、新会社経由で「特別徴収切替申請書」を市役所に提出すれば新会社で天引き継続できます。
出典:全国健康保険協会:任意継続被保険者制度、国民健康保険制度、国民年金保険料、総務省:住民税のしくみ。
4. 失業手当:ハローワークで申請
失業手当は雇用保険の「基本手当」で、退職理由により給付開始時期が変わります。会社都合(解雇、倒産、契約満了)は申請後7日間の待機期間で給付開始、自己都合(自分から辞職)は7日間に加え2か月の給付制限期間(2020年10月改正後)を経て給付開始します。
給付額は退職前6か月の平均賃金の50-80%(年齢と所得別)、給付期間は最短90日から最長330日(年齢、勤続年数、退職理由で決定)です。
申請場所は居住地のハローワーク(公共職業安定所、全国一覧)で、必要書類は離職票、本人確認書類(マイナンバーカードなど)、写真2枚、印章、銀行通帳です。受理後は4週間に1回「失業認定日」に窓口で報告し、求職活動の状況を伝えます。
外国人の特殊事情として、求職期間中に在留資格を「特定活動」(最長1年)に切り替える必要がある場合があります。短期間(最大3か月程度)は技人国などのビザのままで失業手当を受けられますが、長期化すると在留資格に問題が生じます。
出典:ハローワーク:雇用保険の手続き、厚生労働省:基本手当の所定給付日数、出入国在留管理庁:転職活動のための在留資格変更(特定活動)。
5. 外国人特有:14日以内の届出
技人国、高度専門職などの就労ビザ所持者は退職後14日以内に入管に「契約機関に関する届出」を提出する必要があります。オンライン(入管オンライン申請、無料)か地方出入国在留管理局窓口で行え、記載項目は退職会社名、退職日、退職理由です。
次の会社が決まっているなら「離職と新入職」を一度に提出できます。未定なら「離職」のみ提出し、決まり次第14日以内に「新入職」を追加提出します。
届出を忘れると次回の更新で発覚し、所属機関等届出不備で最大¥200,000の過料が科される可能性があります(在留管理法第71条の5)。
業務内容が大きく変わる転職では、「就労資格証明書」(手数料¥1,200、1-3か月で結果)を申請して新業務が現在の在留資格範囲内であることを確認すると、次回更新時に安全です。
出典:出入国在留管理庁:契約機関に関する届出、就労資格証明書、届出義務違反の過料。
6. よくある落とし穴
辞表をメールだけで送るのは日本の慣習に反します。対面口頭通告のあとに書面提出するのが正式で、メールのみは「本意ではない」と受け取られて後の紛争で不利になります。
離職票が届かないまま1か月放置するのも危険です。1か月超過したら前社の人事かハローワークに連絡し、放置すると失業手当申請が遅れます。
健保切替を忘れると、14日(国保)か20日(任継)を超えて遡及加入になり、その間の医療費が全額自己負担になる可能性があります。
住民税の一括徴収を知らずに1-5月退職すると、最終給与で大額が天引きされ手取りがマイナスになります。事前に天引き額を計算します。
自己都合退職で「すぐ失業手当が出る」と思うのも誤解です。自己都合は7日プラス2か月の給付制限(合計2か月超)の待機期間があり、その間の生活費は事前に準備します。
外国人が14日届出を忘れると次回更新で詰まります。退職時にカレンダーでリマインダーを設定するのが安全です。
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