日本を離れる前の手続き:退去・税金・銀行・携帯・役所
出国日が12月か1月かで住民税が1年分変わる。脱退一時金の上限5年分と源泉20.42%の取り戻し方まで、出国前後の手続きを時系列で整理します。
日本を離れる準備は出発の少なくとも1か月前から始めます。手続き同士に依存関係があり——転出届を出さないと国保を抜けられない、引き落としを止めないと口座を閉じられない——順番を間違えると出国後に処理が残ります。そして意外に知られていないのが、出国日そのものが税額を左右することです。日付に余裕がある人は、先に税金の節を読んでから航空券を取ってください。
1〜2か月前:退職連絡、退去、モノの処分
会社や学校へは契約・規則に従い、通常30日前を目安に連絡します。会社側は社会保険の資格喪失と源泉徴収票の発行を行いますが、この源泉徴収票が後の還付申告と脱退一時金の税金還付の原始資料になるので、紙とデータの両方で保管します。
賃貸の解約通知は1〜2か月前が相場です。退去立会い、原状回復費の見積もり、敷金の返金先を確認します。敷金は出国後だと日本の口座にしか振り込めないことが多く、口座の解約は敷金着金の後に置くのが安全な順序です。部屋を空にする作業も想像より時間を食います。粗大ごみは自治体サイトでの予約と処理券の購入が必要で、繁忙期の3〜4月は予約が2〜4週間先まで埋まります。冷蔵庫・洗濯機・テレビ・エアコンの家電4品目は家電リサイクル法のルートで、リサイクル料と運搬費で1台¥3,000〜6,000かかります。
住民税:出国日で1年分変わる
住民税の課税基準日は1月1日です。その日に住民票が日本にあれば、前年の全所得に対する1年分の住民税が課され、その後に出国しても請求は消えません。つまり12月下旬の出国と1月上旬の出国では、丸1年分(年収400万円なら20万円前後)の差が出ます。日付を動かせるなら、これがこのリスト全体で最も金額の大きい一項目です。
すでに届いている当年度分の住民税は、普通徴収の残り期数を出国前に一括納付するか、納税管理人(出国後の税務通知と納付を代行する個人・事務所)を市区町村に届け出て処理を引き継ぎます。所得税側では、年の途中で退職して出国する人は源泉徴収が年間在職前提で計算されているため払いすぎが普通で、出国前の準確定申告か納税管理人経由の申告で還付を受けられます。
2〜4週間前:引き落としを止めてから口座と携帯
税金の段取りが付いたら、「勝手に動き続けるお金」を止めます。順序は引き落としの整理が先、口座の解約が後です。銀行解約は原則本人来店で、通帳・届出印・在留カードを持参します。光熱費・クレジットカード・サブスクの引き落としを全部止めるか付け替えてからでないと、引き落とし失敗が信用情報に残ります。敷金や還付金の着金待ちがあるなら無理に閉じず、多くの銀行は非居住者の短期保有を許容します。ただし放置口座は休眠扱い(10年無取引で最終的に国庫帰属)になるので、入金を確認したら速やかに閉じます。
携帯は解約時に端末分割の残債が一括精算されます。先にやるべきは番号の付け替えではなく認証の付け替えです。日本の番号が消えるとネット銀行や各種アプリのSMS認証が受け取れなくなるため、重要アカウントの2段階認証をメールか母国の番号に変えてから解約します。NHKの受信契約は電話での解約手続きが必要で、放置すると請求が続きます。郵便局の転居届は国内転送のみで国際転送は存在しないので、重要な郵便物は宛先変更か友人の代理受取に切り替えます。
最後の14日:転出届と在留カードの分かれ道
転出届は出国予定日の14日前から市区町村で受け付けます。マイナンバーカードがあればマイナポータルからオンライン提出も可能です。転出と同時に住民票が消除され、国民健康保険の脱退と未納保険料の精算も同じ窓口で済みます。マイナンバーカード自体は転出で失効します(カードは手元に残せますが機能は止まります)。
在留カードの扱いは2択です。完全に離れるなら、空港の出国審査で審査官にカードを返納します。1年以内に戻るみなし再入国(または再入国許可)を使うなら返納せず、審査時にその旨を伝えます。ここの間違いはリスクが非対称で、返し忘れは大きな問題になりませんが、戻るつもりなのに返納すると在留資格を自分から手放したことになります。
出典:出入国在留管理庁:在留カードの返納、総務省:住民異動届
出国後:脱退一時金と、その税金の取り戻し
国民年金・厚生年金に通算6か月以上加入した外国籍の人は、出国から2年以内に脱退一時金を請求できます。上限は5年分(2021年4月に3年から引き上げ)。日本年金機構のサイトから請求書を入手し、パスポートの出国スタンプ面のコピー、基礎年金番号がわかる書類、受取口座の証明を添えて郵送します。着金まで3〜4か月が目安です。
ここで終わらせると損をします。厚生年金分の脱退一時金は支払い時に20.42%が源泉徴収されますが、これは出国前に届け出た納税管理人を通じて退職所得の選択課税の確定申告をすると還付されます。5年分の厚生年金なら一時金が100万円を超えることも珍しくなく、その20.42%は20万円以上。納税管理人の届出(住所地の税務署へ)を出国前のリストに入れておく価値は十分あります。国民年金分は源泉徴収されないため、この手続きは不要です。
出典:日本年金機構:脱退一時金、国税庁:退職所得の選択課税(非居住者)
用語
- 転出届: 住民票を抜く届出。出国14日前から
- 納税管理人: 出国後の税務を代行する個人・事務所
- 脱退一時金: 年金保険料の払い戻し。出国後2年以内・上限5年分
- みなし再入国: 1年以内の再入国なら許可申請不要の制度
- 準確定申告: 出国時点で行う確定申告